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BLOG リノベジャーナル

コラム

2022.08.07

家探し 不動産 断熱・耐震

必ず聞かれる「中古マンションの寿命」について、お答えします。

中古でマンション購入を検討する際、誰もが少なからず気にするのが「マンションの寿命」についてではないでしょうか。一般的に「マンションの寿命は60年くらい」と言われていますが、実際のところ建物はどのくらいもつのでしょうか?また寿命というのはどのように決まるのでしょうか?この記事では、マンションの寿命に影響を及ぼす要素や、寿命を迎えたマンションとの付き合い方などについて様々な観点から探っていきます。

 

必ず聞かれる「中古マンションの寿命」について、お答えします。 耐震性

 

 

マンションの法定耐用年数とは?

マンションに限らず建築物には「法定耐用年数」が定められています。

法定耐用年数と実際のマンション寿命は別物

法定耐用年数とは、毎年減価償却をしていき「償却がゼロになるのにかかる年数」のことを指しています。減価償却がゼロになる時は、つまりその建物の価値がゼロになる時なのです。木造アパートやマンションの法定耐用年数をまとめたものが下表です。


国税庁作成「主な減価償却資産の耐用年数(建物・建物附属設備)」より抜粋して作成

 

この表にある通り、マンション(鉄筋コンクリート造の建物)の法定耐用年数は、1998年の税制改正によって47年と定められています。ただし、法定耐用年数は、減価償却費の計算に用いられる基準に過ぎません。耐用年数を超えると何か性能が落ちるわけではなく、マンションを建築して47年後に人が住めなくなる、というわけではもちろんありません。耐用年数=寿命ではないということは、しっかりと理解しておかなくてはなりません。

実際、2013年に国土交通省が発表した資料「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新 による価値向上について」によると、鉄筋コンクリート造 (RC造)の建物の平均寿命は68年となっています。さらに、構造体としての鉄筋コンクリート造の最長寿命は120年で、外装仕上げによって延命すると、耐用年数は150年になるといいます。ここから、法定耐用年数の47年と、建物としての実際の耐用年数には大きな乖離があることがわかります。

ローンを組む際には法定耐用年数が重要になるケースも

ただし、住宅ローンを組む際は注意が必要です。住宅ローン借入期間は基本的に最長35年間(満80歳まで)とされていますが、審査上は、耐用年数と築年数の差分で借入期間が設定されます。

築年数の古いマンションを購入する場合、借りる方の年齢にかかわらず借入期間が短くなることがあります。金融機関によって多少変わってきますが、借入期間が短くなるということは月々の支払いが増えることになるので、この辺りも頭に入れておくと良いでしょう。

 

マンションの建物寿命どうやって決まる?

マンションの寿命とは、法定耐用年数によって規定されるものではありません。では、実際のマンションの建物寿命はどのように決まるのでしょうか。ここでは、「耐震性からみた寿命」「物理的な寿命」「経済的観点からの寿命」という3つの視点から、マンション寿命の本質を探ってみましょう。

視点1:耐震性からみた寿命

マンションの寿命を考えるときに真っ先に思いつくのは「耐震性」でしょう。耐震性は地震大国日本ならではの視点です。いくら鉄筋コンクリート造の建物が構造上強固だとしても、地震によって倒壊してしまうような脆弱性を持っている建物は、「寿命が短い」といわざるを得ないでしょう。

耐震性による寿命の線引きは、「耐震基準」にあります。
1981年以前の『旧耐震基準』で建てられたマンションは、1981年以降の『新耐震基準』で建てられたマンションと比べて、コンクリートの性能鉄筋の量・施工法などが異なっています。具体的には、旧耐震基準では震度5強の地震に耐えられることが構造基準となっています。一方、新耐震基準では、震度6強から震度7程度の揺れにも耐えられるような基準を設定しています。

一概に1981年以前の建物がすべて『弱い』とは言い切れませんが、新耐震基準の建物に比べると大きな地震に対する耐力が低くなっている傾向にあります。

しかし旧耐震基準で設計された建物がすべて「寿命を迎えている」とはいいきれないでしょう。旧耐震基準で建てられたマンションでも、建て方がしっかりしており比較的地震に強いマンションもあるはずです。

一方、旧耐震基準のマンションについては、耐震診断を受けて、耐震改修工事を施せば「寿命が延びる」と考えても良さそうですが、実はそう簡単な話では無いのです。

耐震改修工事を施したとしても、新耐震基準と同等の耐震性が確保できるわけではないのです。一定の効果はありますが「あくまでも倒壊などを防ぐ」という意味での補助的な耐震改修になります。ましてや、耐震改修を行うということは、マンションの柱や梁に囲まれた部分に鉄骨の筋交いを増設することになるため、窓から見える景色が変わってしまったり、外部から見た景観・デザイン性の問題から周囲の賛同を得られず、なかなか耐震改修に踏み切りにくいという事情もあるようです。

 

視点2:年月が経つことによる物理的な寿命

耐震性の問題を抜きにして考えると、経年劣化によりマンションの寿命が尽きる可能性もあります。しかし新耐震基準のマンションで、かつ定期的に構造躯体や防水・仕上げ・配管などのメンテナンスを適正に実施しているような「管理が徹底されている建物」であれば、寿命を長くもたせることは不可能ではないと言えるでしょう。

マンションを内見すると不動産屋の担当者から「このマンションは管理もしっかりされていて……」といった話を耳にすることもあると思いますが、この「管理」とは「建物を長くもたせるための管理」なのです。人間と同じで、同じ築年数のマンションでも、手厚いメンテナンスを施した建物とそうではない建物では、大きな差がつくことはいうまでもありません。

しかし、どれだけ管理をしていても、劣化を完全に止めることは出来ません。年数を重ねるほどにメンテナンス費用が大きくなるのも確かです。維持するために費やしてきたメンテナンス費用と、建て替える場合の費用が、限りなく近づいてくることになります。メンテナンスに対する居住者の負担が大きくなるほど、建替えのために取り壊される可能性も高まります。

 

視点3:経済的観点からの寿命

耐震性・管理状態の良さなどから、物理的には100年以上住み続けられるマンションもあります。しかし、物理的に問題が無くても経済的観点から取り壊しになる実例も数多くあります。

例えば、関東大震災からの復興を目指して東京や横浜に16ヶ所建てられた同潤会アパートのうち、最後まで残った鉄筋コンクリート造の建物「上野下(うえのした)アパート」が、2013年5月、84年の歴史に幕を閉じました。旧耐震基準とはいえ、これよりも前に取り壊しや建て替えになった同潤会アパートも60年~70年ほどは現役で使われていました。また2016年には、日本初の分譲マンションだった渋谷の「宮益坂ビルディング」も65年の寿命をまっとうしました。

このようにまだ耐えられるにも関わらず、近辺の再開発や区画整理などによる周辺整備などが理由で取り壊されてしまう建物もあります。これはつまり、経済的な寿命といえるでしょう。こればかりは政治経済の動きに影響されるので予測するのは難しいですが、購入を検討しているエリアでどんな再開発が行われようとしているのか、もしくは既に開発されているエリアなのか、などを見極めていくと良いでしょう。

 

マンションの寿命に影響する要素──管理・配管・立地

先の「視点2:年月が経つことによる物理的な寿命」で触れたように、建物の寿命を延ばすためには、適切なメンテナンスを施すことが肝要です。またほかにもマンション寿命に影響する要素があります。ここでは、3つの要素である「管理」「配管」「立地」について解説していきます。

管理

マンションをはじめとする建物は経年劣化するものです。そのためマンション住民は将来のメンテナンスのために修繕金を積み立てています。一般的にはマンションの大規模修繕は12年周期と言われています。大規模修繕では、マンションの外壁の汚れやひび、コンクリートのサビ・腐食などを直します。定期的なメンテナンスをすることで、マンションなどの建物は寿命を延ばすことができるのです。

配管

マンションの建物自体(躯体)を大規模修繕などでメンテンスしても、内部の配管が劣化するとマンション寿命を縮めることになります。そもそも50年以上前に建てられたマンションは、配管のメンテナンスが現実的に難しいため、配管の寿命がそのままマンションの寿命となってしまうのです。

古いマンションの配管は、下の階の天井を通っている構造のものが多いため、自室の配管にトラブルがあってもすぐには交換・補修ができないのです。下の階の住人の協力が得られたとしても、天井壁のコンクリートに大規模な工事が必要になる場合は、その時点でマンションの寿命が尽きてしまっているとも言えます。

立地

建物がどのような立地に建っているかによっても、マンションの寿命は変わってきます。例えば、台風の通り道になっているようなエリアでは、外壁や屋根へのダメージが蓄積しやすいため建物寿命が短くなるかもしれません。日当たりの悪いエリアではカビが発生しやすく、そこから腐食が進むことになります。また海が近いエリアでは塩害の影響によって、コンクリートが劣化する心配があります。

寿命を迎えたマンションはどうなる?

耐震性や設備の問題、近隣の経済性の変化などによって、寿命を迎えたマンションはどうなるのでしょうか。ここでは、3つのパターンを紹介します。

住民の負担で建て替える

1つ目は、現住民が費用負担をして新しいマンションを建てるパターンです。しかし、1棟のマンションには、若いファイリー世帯から老齢の住民まで、年代や職業、家族構成、資産などが異なるさまざまな世帯が住んでいます。当然、建て替えを希望しない人もいるでしょう。所有者の5分の4の賛成を取り付けなくては建て替えはできません。その意味で、費用を負担して新しい建物を建てるというのはあまり現実的ではありません。

ディベロッパーに売り渡す

2つ目は、建物ごとディベロッパーに売却するパターンです。売却して得られた利益を住民で分け合う方法です。しかし、この方法も、現住民が立ち退きを希望しない場合には首尾良く進みません。また、建物の取り壊し費用は住民負担となります。そのため、住民の手元に残る利益は期待したほど多くない場合があります。新たな引っ越し先を探す手間なども考えたら、住民にとって不利益になる可能性もあるでしょう。

住民負担なしで建て替える

新たに建てるマンションの戸数を増やし、分譲マンションとして売ることで、現住民の負担をゼロにする方法です。ただし、これは容積率などが余っている場合に限るので、実現可能性は必ずしも高くありません。しかし、この方法は負担ゼロで、かつ新しいマンションに住み替えられるという意味で住民にとってはもっとも好ましい選択肢かもしれません。

まとめ

このようにマンションの寿命は、建物の耐震性、管理状態、近隣の経済性などに基づき変化していきます。また建物の構造(配管)や立地などでも、寿命は変わってきます。

2015~2016年には熊本地震によって多くの家屋が倒壊しました。被害を受けた建物の中には新耐震基準をクリアしていた建物も数多くあったといいます。この例からも分かるとおり、一概に「新しい建物だから安心」と胸をなでおろすことが出来ない実情もあるのです。

残念ながら、建物一つ一つの状況が違うので「マンションの寿命は〇年!」と定義することは出来ません。ただ一つ言えるのは「古くなったら建物の価値が減る」という減価償却ありきの考え方に凝り固まってはいけない、ということです。特に管理面においては、管理会社だけでなく「管理費・修繕積立金を滞りなく支払う」「ルールに則った使用を心がける」など、居住者の努力も必須なのです。

上野下アパートや宮益坂ビルディングのように、居住者や周囲の住民に愛され続け、また空室が出来ても定期的にリフォームやリノベーションを繰り返して「住み継がれる」マンションを生み出すことが、マンションの寿命を長くする大きなポイントであり、持続可能な社会を作る上でも大事な視点になるのではないでしょうか。

 

弊社では、中古マンションをリノベーションによって生まれ変わらせる取り組みを行っています。今後も、お客さまとともに、磨けば光る中古住宅を一緒に探していきたいと考えています。

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